あのデザイン、めっちゃかっこいい。ちょっと自分流に作り変えてみよう」
ーーでも、その“ちょっと”が炎上の火種になることもあります。
SNSやPinterestで素敵なデザインを見つけたとき、
「これを参考にしてみよう」と思うのはクリエイターとして自然な行動です。
ただし、“参考”と“盗用”の境界線を見誤ると、意図せず「パクリ」と言われてしまうことも。
この記事では、デザイン倫理の観点から「炎上しないリメイクの作り方」を解説します。
AI時代でも“誠実な創作”を続けるためのヒントをまとめました。
なぜ今、“デザイン倫理”が注目されているのか
AI画像生成(Adobe Fireflyなど)の普及で、
“誰でも簡単にプロっぽいデザインを作れる時代”になりました。
しかし同時に、他人の作品や構図を知らずに使ってしまい、
著作権・商標・倫理面で問題になるケースが増えています。
特にPinterestでは、世界中のデザインがピンとして共有されるため、
「これって使っていいの?」という不安を持つ人が非常に多いです。
「AIや他人のデザインを“参考”にすること」と
「そのまま“模倣”してしまうこと」には明確な違いがあります。
まずはこの線引きを理解することが、“炎上しないリメイク”の第一歩です。
「参考」と「パクリ」の境界線

| 項目 | 参考(OK) | パクリ(NG) |
|---|---|---|
| 目的 | 学習・再解釈 | 模倣・時短 |
| 構図 | 一部要素を応用 | 全体をコピー |
| 色/質感 | 雰囲気を取り入れる | カラーパレット丸写し |
| コピー | コンセプトを再構築 | フレーズを置き換えただけ |
| 説明責任 | 自分の意図を説明できる | 「なんとなく似せた」状態 |
「パクリ」と呼ばれる作品には、共通して“説明できない要素”が多いです。
つまり、「なぜこの配置・色にしたのか?」が答えられないデザイン。
逆に、リメイク後に「ここには、こういう意図があります」と説明できるなら、
それは“良い参考”=クリエイティブなリデザインです。
炎上を防ぐ「良いリメイク」の5ステップ

① 元の作品の“目的”を理解する
Pinterestで見つけたデザインを真似る前に、
「なぜこのデザインは良く見えるのか」を考えましょう。
構図・余白・フォント選びにはすべて意図があります。
→ 目的を理解することで、「形」ではなく「考え方」を学べます。
② 構成を分解し、エッセンスだけを残す
たとえば気に入ったポスターがあった場合、
レイアウト・配色・タイポグラフィ・ビジュアル要素を分解して考えます。
「この余白感が心地いい」「中央揃えが安定している」など、
原理を抽出して、自分の文脈で再構築することが重要です。
③ AIツールや素材の出典を明示する
AI生成ツール(Firefly、Canva、Runwayなど)を使用した場合、
プロンプトや利用ツールを明示しておくと透明性が保たれます。
例:
Image generated with Adobe Firefly / Modified by [Your Name]
PinterestやXなどに投稿する際も、
「AI assisted」などの表記を添えることで信頼性が上がります。
④ 自分の“視点”を必ず加える
単に形を変えるだけでは「コピー」に見えがちです。
そこに自分の視点=ストーリーや価値観を組み込むことで、リメイクが“作品”に変わります。
たとえば:
-
元デザイン:都会的なポスター
-
あなたのリメイク:地方の自然をモチーフに再構成
→ テーマが変われば“模倣”ではなく“解釈”になる。
⑤ 投稿前に“倫理チェック”を行う
以下の3つの質問を自分に問いかけてください。
-
どの部分を参考にしたのか明確に言えるか?
-
元のデザインの作者・出典を知っているか?
-
自分の作品に置き換えた意図を説明できるか?
この3点をクリアできれば、炎上するリスクはほぼありません。
曖昧なまま投稿するのが最も危険です。
良いリメイクの実例(構成変化の例)
| 項目 | Before(参考デザイン) | After(リメイク) |
|---|---|---|
| 配置 | 左右対称・中央揃え | 対角線上に要素を再配置 |
| 配色 | 黒×金の高級感 | 生成AIで柔らかいグラデーションに変更 |
| モチーフ | 静物写真 | イラスト化+自分の撮影素材に差し替え |
| コピー | 「LUXURY DESIGN」 | 「MODERN CRAFT」へ置き換え(意味変更) |
→ “構造”を変え、要素の意味を再構築することで、
オマージュでありながら独自の作品として成立します。
「AIが作ったデザイン」をリメイクするときの注意点
AI画像を“自分の作品”として使うときは、
生成物の著作権と利用条件を必ず確認しましょう。
・Adobe Firefly:商用利用可、ただし倫理的テーマは制限あり
参考【Adobe Firefly を適切に活用するための著作権との付き合い方 第4回 Firefly の生成物は著作権を侵害するか】
・Canva Magic Studio:利用規約を遵守すれば商用利用が可能
参考【Canvaを使って販売用のデジタルおよび物理的な製品をデザインする】
知らずに使うと、商用利用NG素材を無断利用した扱いになることも。
引用する際は「生成ツール名+自分の編集範囲」を明記しておくのが安全です。
まとめ:真似ではなく、“敬意を込めた再構築”を
「良いリメイク」は、リスペクト+再解釈+透明性の3つで成り立ちます。
-
🔹リスペクト:元の作品や作者を理解する
-
🔹再解釈:自分の視点で構造を組み直す
-
🔹透明性:制作プロセスや使用ツールを開示する
それができていれば、他者からも「誠実なデザイン」として信頼されます。
AIやPinterestが発達した今こそ、
“模倣のうまさ”より“説明できる誠実さ”が評価される時代です。
🧷 保存しておきたいチェックリスト
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元デザインの意図を理解した
-
要素を分解して応用した
-
使用ツール・素材の出典を明記した
-
自分の視点を反映した
-
投稿前に倫理チェックを行った
この5項目を満たせば、あなたのリメイクは“炎上しないデザイン”になります。
Pinterestを眺めていると、「あ、これ真似したいな」という作品にたくさん出会います。
でも、本当に価値があるのは“似せ方”ではなく、“活かし方”です。
あなたのリメイクが、誰かの新しいインスピレーションになりますように。
(関連記事)デザインの悪いパクリと良いパクリ【どこまでが良い基準?】

